とんでもない試合が実現した。前田慶次郎は、TRYOUTの一番星として大成長した新鋭。チーム・ドラゴンの前田は、澤屋敷らに続く若手として大きな期待をかけられている。だが、前田が闘うのは、なんとマイティ・モー。昨年の横浜大会でチェ・ホンマンを豪快にKOしたマイティと試合をするのは、無謀との声も多い。しかし、前田は緻密な戦略で有名なチーム・ドラゴンに所属しているため、何をやらかすかもしれない。横浜マジックはあるのだろうか。

　１Ｒ、リングを右に回る前田。マイティは右フックを振り回すと、あまりの迫力に会場がどよめく。さらにマイティは左フック。思わずこける前田。盛り上がる会場。右フックを打っていくマイティ。驚く会場。右フックで吹っ飛ばされる前田。絶叫する会場。だが、前田は左ローキックを連続で蹴っていく。スキを見て、蹴りを飛ばす前田。襲いかかるマイティ。終わるのは時間の問題かと思われた。

　２Ｒ、リングを右に回る前田。前へ出るマイティに左ローキックを蹴っていく。マイティは右フック。逃げる前田。前田は右ローキック、左ローキックを連続でヒットする。マイティは相変わらず右フック。右フック。右フック。転がるように逃げる前田だが、フックを返しながらローキックを当てていく。マイティはローキックが効きはじめたのか、嫌がる表情を見せる。自らもローキックを返すが、逆に前田のローキックの餌食にあう。

　３Ｒ、マイティの動きが遅くなってきたことをみると、前田は足を止めて、ローキックを当て始める。左、右とローキックがヒットし、マイティは動きが止まってしまう。右フックもスピードが遅くなり、もはやペースは前田に。ぺチン、ぺチンとローキックが炸裂する音が会場に響き渡る。ローブローになることもあったが、マイティのローキックが効いていることは間違いない。前田が押したところで、試合終了のゴング。判定はドローとなり、延長へ突入した。

　延長戦。ローキックを蹴りまくる前田。もはや完全に立場は逆転した。右ハイキックでKOを狙う前田。これは当たりが浅かったが、KOが生まれる予感もある。ローキックがローブローになり、一時中断。前田に注意が与えられる。ローキックを連発して、マイティは完全に嫌がってしまう。だが、タイムアップ。KOまであと一歩のところで、判定へ持ち込まれた。判定は、文句なしで前田。昨年の澤屋敷に続き、前田がミラクルを起こした。■

前田慶次郎のコメント

――試合の感想をお願いします。
前田　申し訳ないです。格闘技人気が下がっているのは分かっていて、行きたかったけど行けなくて…落ち込んでいます。6月、JAPAN GPに出られれば、打ち合うような試合をしたいです。
――判定結果には満足ですか？
前田　2Rから相手のスタミナが切れているのが分かって、行けたらよかったんですけど…。判定結果は審判が決めることですから。本戦一戦目でインパクトを残したかったんですけど…。
――倒せそうな雰囲気もありました。
前田　ローキックが効いていると思いました。パンチを出せればもっと沸かせられたと思います。去年の横浜みたいに盛り上げたかったですね。次回は中身のある試合をしたいです。
――日本人で初めてマイティ選手に勝ちました。
前田　マイティ選手を牛に例えていたんですけど、料理できずに放し飼いにしてしまった感じです。次はもっといい試合をしたいです。
――髪型は？
前田　高校卒業してから、ずっと自分でいじっています。前はハート4つでクローバー模様にして、後ろはマスク模様ですね。
――ローキック連打は効いていたと思います。
前田　みんな足が止まった状態でフックをもらっていたんで、そこから返してハイキックに繋げたかったです。相手も体調が悪いのは知っていたんですけど、冷静すぎて…。
――JAPAN GPで対戦してみたい相手は？
前田　今日のマイティ選手よりパンチが強い人はいないので、武蔵選手だろうと藤本選手だろうとブッ倒します。本当はKOして面白いことを言いたかったですけど、今日はこんなもんです。
――初の本戦でした。
前田　冷静すぎて…思ったよりも普通でしたね。次は熱を帯びる試合をしたいです。■

マイティ・モーのコメント

――ダメージの具合はどうですか？
マイティ　通常のダメージはそこまでないよ。ただ、ローブローのダメージはひどいな。
――結果には納得していますか？
マイティ　ヤツは逃げてばかりで、押さえ込んで…。ああいう試合運びをするなら、オレの勝ちじゃないのか？　しかもローブローまで。不本意だよ。あとは体調が良くなかった。それを言い訳にせず、いい試合をしたかったけどな。
――どのような体調不良ですか？
マイティ　鼻からノドにかけての炎症だ。3週間前から体調不良なんだよ。練習もそこまでできなかった。
――本調子なら負けていない？
マイティ　どちらにしても、今日の試合運びならオレの勝ちだっただろうな。逃げてばかりで…ただ、オレも汚い勝ち方はしたくなかった。100％の状態なら、もっとスッキリした試合になっただろう。リベンジしたいね。それは負けた相手、全員に対してだ。■