第7試合◎World Championship Tournament FINAL16:K-1ルール/3分3R延長1R
アルトゥール・キシェンコ
(ウクライナ/キャプテン オデッサ)
vsジョーダン・タイ ×
(ニュージーランド/レイ・セフォーファイトアカデミー)
延長R判定3-0
 ※10-9、10-9、10-9。本戦…28-28、28-28、28-28。2R、キシェンコは右フックでダウン1あり
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“美しき死神”の異名を持つキシェンコは昨年、本戦に抜擢されるといきなりベスト4に進出。将来のエース候補として強烈なアピールに成功した。その勢いは今年に入っても衰えず、2月の日本大会でも我龍真吾を圧倒。あらためて強烈な存在感を見せている。対するジョーダン・タイはWGPで活躍するレイ・セフォーやグラウベ・フェイトーザと練習を行ない、実力アップには余念がない。実力的にキシェンコが上だと思われがちだが、タイはタフさが身上のファイター。キシェンコのボディブローに耐えることができれば、勝機を見出せるはずだ。キシェンコは、昨年の躍進がフロックでなかったことを証明するためにも、結果以上に内容も求められる。勝利が絶対条件だが、プレッシャーのかかるキシェンコと、勝てば大きなチャンスを掴むタイ。両者の立場が試合にどう反映されるのだろうか。昨年のベスト4が開幕戦で消えることも十分にあり得る。

 1R、キシェンコは左ミドルキックを飛ばしていく。タイも右の蹴りを返し、ワンツーを打っていくが、キシェンコはインローで崩しにいった。キシェンコは、右ローキックを落とす。右フック。インローと多彩に攻めていく。タイはローキックでキシェンコの足を狙うが、崩すには至らない。キシェンコはローキックを打ちつつ、得意の左ボディブロー。タイはバックステップで下がり、ポイントを外すと左フックで攻撃。キシェンコの動きを研究しているようだ。タイは、右フックを軽くヒット。さらにパンチで追い込んでいく。すると、キシェンコの右ハイキックをもらい、動きが止まってしまう場面もあった。

 2R、タイは右ローキック。キシェンコはワンツー、そしてヒザ蹴りへとつなげる。タイは左フックを返していった。キシェンコは、ワンツー、右ローキックをヒット。タイは、すかさず右フックで反撃だ。さらに右アッパー。キシェンコは、タイの予想外の攻撃に戸惑っているのか、ときおりパンチをもらうこともあり、危険な賭けには出ない。ローキック、ヒザ蹴り、ローキック、ヒザ蹴りを繰り返した。このタイミングを読んだタイは、ヒザ蹴りに右フックを合わせることに成功する。キシェンコが、まさかのダウンだ。すぐに立ち上がったキシェンコは、フックやヒザ蹴りで失ったポイントを奪いにかかるが、タイは崩れない。

 3R、あとのないキシェンコは、最初から厳しい攻撃を仕掛ける。左ミドル、左ハイキック、ワンツー、左フックとタイを潰しにかかる。タイは右フックを仕掛けるが、キシェンコは怯まない。ヒザ蹴りで圧力をかけ、ハイキック、ボディブロー、バックブロー、後ろ回し蹴りと続けた。タイは、防戦一方。このラウンドは、キシェンコがとったことだろう。ダウンがあるものの、1、3Rをとっていればイーブンに持ち込める。運命の判定は、やはり三者とも28:28。延長戦へ持ち越された。

 延長戦。キシェンコは、左ストレート、右ローキック、ワンツー、右ローキックと怒涛の攻めが止まらない。タイは、右ローキックを繰り出すが、キシェンコの勢いを止めることはできない。完全に目覚めたキシェンコは、ヒザ蹴り、左ボディ、右フックと地獄のコンビネーションが襲いかかる。タイは右ストレートを返すのみ。キシェンコは、フックやヒザ蹴りの繰り返しで、最後の最後で自分のペースで闘うことができた。判定は、やはりキシェンコ。ダウンのマイナスポイントを取り返し、勝利を勝ち取るのは、さすがといったところか。次世代を担うキシェンコが、準々決勝へと駒を進めた。■

 
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アルトゥール・キシェンコのコメント

――ダウンを奪われるシーンもありましたが。
キシェンコ あのときはパーンと頭が真っ白になったね。かなり強い攻撃だったよ。
――試合に勝った実感は?
キシェンコ 3R目は勝ったと思ったけど、判定は引き分けになった。それは2Rでのダウンが響いたんだろうね。
――タイ選手の印象は?
キシェンコ とても立派な選手だよ。強い肉体を持っていて、実は最初、ボクは驚いてしまったんだ。
――今日の試合に点数を付けるとしたら?
キシェンコ 自分で勝ったことだけを見れば、点数は通信簿で言う5だと思う。でも、ダウンや延長戦も入れると5じゃないな。けれど、今日は勝ったしベスト8に進出できたからね。そうだ、あなたは何点くれますか? え、70点? 正直な意見をありがとう(微笑)。
――準々決勝で闘いたい相手は?
キシェンコ 誰とやりたいってここで言うのは意味がないよ。みんな、それぞれの理由があってやりやすい選手がいる。それを今、考えるのは意味がないな。勝ち残った選手はみんな、強いと思うよ。明日の抽選会が運命を決めてくれるし、それに従うつもりだ。■



ジョーダン・タイのコメント

――ダウンを奪いましたが、延長戦で判定負けでした。
タイ どういった理由で延長戦になったか分からないよ。でも、キシェンコは昨年のベスト8だし、闘えたことは誇りだ。それに自分の実力はすべて出せた。次回も頑張りたいと思っているよ。
――キシェンコ戦の作戦は?
タイ 基本的にはカウンターだね。あとは、どうやって攻めてくるかを見ながら、自分の持っている技を出そうと思っていた。
――ダメージはありますか?
タイ ダメージというか全身、痣だらけだよね(笑)。でも、全力を出したし、みんなに喜んでもらえた。少なからず嬉しい気持ちではあるよ。■